お煮しめ(三光院のお料理解説)

 お煮しめの三つの特徴

一、お出汁を一切使わずに、淡味を引き出しています。

一、快敷と呼ばれる葉っぱが祈りを込めて配置されています。

一、全て当日、煮出したものしか提供していません。


⚠️更に詳細を知りたい方だけ、下記にお進みください。

少なくとも食事中でしたら、上記の特徴だけで情報は十分だと思われます。

季節や場の背景を感じることも食だと米田祖栄和尚様はおっしゃっておられました。

是非、空間と時間を楽しんでください。

余計な文章情報はお帰りになってなお、興味がありましたらどうぞ。

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三光院の精進料理の最初の一皿を飾るのが、この象徴的なお煮しめです。

日本料理、和食といえばお出汁です。お出汁が源泉となる「旨味」においては、世界共通語にもなりました。

西井香春先生が三光院に来て最初にまず驚かれたのが、このお出汁についての考えです。

西井香春先生も、精進料理イコール和食イコールお出汁、と考えていたそうです。

このお出汁は非常に厄介な存在でもあり、食事をしても見た目だけでは分かりません。

それもあって日本国内においても、精進料理の名店とされるところでは、お出汁が魚介類が使われていることもよくあります(これは否定ではなく、事実の報告だけです)

一方で、三光院のこのお煮しめには、そもそもお出汁は一切、使われていません。

それはなぜなのでしょうか?

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料理の世界では、五つの味、「五味」はよく知られています。※1

一方、三光院では古くから六味を重要視。六味目とは何か?これは「淡味」と呼ばれるものです。

淡味とは素材そのものの味わいを指します。もちろんこの淡味は、正確には味覚👅ではありません。※2

野菜の味わいの魅力を三光院(竹之御所流)では、「静かな」とか「遠い」とか、味覚とは直接結びつかない表現で共有することが日常的に行われております。これは地味とか、薄味とか、素朴などと誤解されることがありますが、そうではありません。

繊細な味わいは、弱い、とイコールではないのです。

一方で、繊細さは他要素に干渉されやすく、覆い被されやすいのも実状です。

お出汁を使ってしまいますと、そのお出汁が良ければ良いほど、お出汁の味になってしまう。それでは淡味を、野菜の魅力を引き出すことには繋がらないので、あえてお出汁を使わない選択をしているのです。

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世の中では日本国内でもヴィーガンの方々が増えてきた印象にあります。三光院のスタッフでも厳格さに濃淡はありますが、ヴィーガンのスタッフは少なくありません。

ヴィーガンですと砂糖の製造方法(特に白砂糖)に厳格な基準がありますので、そもそも砂糖を拒否する方々もいます。

一方で、三光院が継承する御所流の精進料理は、長く石高で維持されてきた寺院だったのもあり、古くは砂糖が非常に貴重だった時代から比較的砂糖をふんだんに使える立場にありました。それもあって三光院では砂糖を使うことに躊躇がありません。ヴィーガンと精進料理は異なる部分も多いのです。

その上で、お煮しめです。

例えば牛蒡。柔らかいね、甘いね、との感想をよくいただきますが、こちらの牛蒡は、叩いてもいませんし、砂糖も使っておりません。それでこの甘味を引き出しているのです。

ではどのように引き出しているのか?

牛蒡は皮を剥いたり、水にさらしてあく抜きしたりも致しません。牛蒡の魅力が消えてしまうからです。タワシで汚れを落としたら、すぐに食べやすい形に切ります。

そして切った牛蒡をたっぷりの水で煮始めます。そうすると水の中に牛蒡の養分が溶け出します。その溶け出した養分が再び牛蒡に吸収され尽くすまで、要はその水が完全になくなるまで、煮詰めるのです。煮物で煮詰めるのはかなり珍しいと思います。

これは火加減によりますが、毎日、おおよそ3時間30分から4時間かけて煮詰めているのです。三光院では当日、煮たものしか提供しておりません。煮物は大量に煮て、というイメージもあるかもしれませんが、お煮しめの素材は他の素材も全て当日、煮出します。

煮る際に重要なのは時間ではなく、水がなくなるまで煮詰めることです。時間は火加減次第で長くも短くも出来ます(あまり短いと無理ですが)。それは他の料理の調理時間を確保するためでもあります。水がなくなるまで煮詰めるということは、焦がしてしまうリスクと常に隣り合わせなのです。それでいて煮物だけにつきっきりになることは出来ません。あくまで尼禅寺ですから、料理だけをしているわけにもいかないのです。

焦がさないギリギリまで煮詰めた後は、炒り胡麻と生醤油で味を整えます。(時には焦がしちゃうこともあります😢)

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このように様々な工夫と技術と時間を経て、淡味を引き出していきます。単に地味な修行飯とは異なります(三光院では修行飯は修行飯でいただくことも提供する機会も定期であります)。素朴な薄味料理とは一線を画します。

これは他の素材も同様です。

680年伝統の竹之御所流精進料理の献立を、初めて世に出したのは米田祖栄和尚様になります。しかし多くの献立には調味料の分量などは記載されていません。それを米田祖栄和尚様は食禅の思想として語っておられます。

「同じ産地の同じ野菜だとしても、糖分量も水分量も異なります。それを同じ調味料の配合や同じ時間で美味しく調理できると考えるのは、謙虚さが足りません。目の前の野菜を観察しなくてはいけません」

食禅には幅も深さもありますが、これは基本になります。三光院から出されている著作や料理教室でも、目安がないと不親切と思われるのでレシピを提供する場合も多いのですが、それはあくまで目安になります。

お煮しめも同様です。カボチャにしても、甘ければ砂糖など使う必要ないのは当然ですが、季節や産地によっては必要なら付け足します。

高野豆腐も同様です。高野豆腐は食材であって野菜ではありません。しかし、高野豆腐自身が自分でお出汁を持っていると考えるから、高野豆腐にもお出汁は使いません。舌のざらつきを感じさせなくするまで時間をかけて煮て、形を整えながらゆっくりゆっくり常温で冷まして行きます。

煮物は冷める過程で味が定着して行きますが、あくまで常温です。熱い冷たいは季節によってはご馳走になりますが、少なくともお煮しめに関しては、常温に落ち着かせてから召し上がっていただくことを常としております。

お煮しめの中で特徴的なのが海苔巻きになります。こちらは大和芋、よく長芋と誤解されることがありますが、大和芋を海苔巻きにしております。日本でもすりおろしてとろろが広く親しまれておりますが、竹之御所流は姫様料理の一面もありますし、禅寺では食事は音を立てずに済ますことが良しとされてもいます。それもあって海苔巻きの調理法が非常に多く発達しています。

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🌱快敷(カイシキ)について

精進料理の共通の規則として、お皿の上に乗せられたものは、全て食べれるもので構成される。というのがあります。命を無駄にしない、ということです。

一方で、三光院では快敷、飾り花と呼ばれる葉や花でお皿を彩る食文化がございます。

戦後になって懐石料理屋さんの真似をして草花でお皿を飾るお寺さんも出てきましたが、元々の食文化としてあったのは比丘尼御所由来の三光院の精進料理くらいだと思われます。

比丘尼御所同士、宮中や出身家などの貴族階級との贈り物のやり取りにおいても、季節の生り物を贈るのにそのままではなく、季節の草花を添えて贈ったとされています。

現在でも三光院では多くの生り物があります。銀杏などはお客様に提供する以上に収穫できますが、お裾分けで送付する場合は、そのままでは贈りません。必ずイチョウの葉も添えて送るのです。

また、欧州のメディアから「皿の上の禅」と称された三光院ですから、視覚を楽しませるためだけで、草花をお皿に乗せることは決してありません。必ず、意味合いがございます。

例えばこの一番最初のお皿に乗せられた葉っぱ。これも快敷と呼ばれるもので召し上がるものではございません。

こちらは境内に採れる南天の葉になります。では、なぜ南天なのか?

古い時代は、食中毒と呼ばれるものが何故に発生するのか不明でした。同じ食材、同じ調理法、なのに身体に深刻な打撃を与えることがある。時代によっては悪霊のせいにされていました。

この南天は、言霊信仰によります。

同音異義語と言ってしまえば無機質ですし、近現代の認知では親父ギャグと一蹴されてしまうのかもしれません。

しかし、同じ発音を持つ別の意味の言葉同士に、深い結びつきがあるのだと長く信じられてきたのです。

したがってこの南天は「難を転じる」という意味合いになります。

最初の一皿に「本日のお食事も無事に済ますことが出来ますように」という祈りが込められているのです。

南天も境内の各所にありますが、こちらは西井香春先生が南天の庭と称する場所


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※1 実はこれも三光院の精進料理の世界と、学科で学ぶ一般的な料理学校の世界では異なったりします。例えば辛味、こちらを味覚として捉えるか、痛みとして捉えるか、などです。

甘味(エネルギー源である糖の検知)

塩味(ミネラル・電解質の維持)

酸味(腐敗や未熟な食物の回避)

苦味(毒物や有害物質の回避)

旨味(タンパク質・アミノ酸の検知)

が一般的な五味。

一方、三光院で意識している五味は

甘味、酸味、辛味、苦味、鹹味(塩味)

となります。

学術的には辛味は痛みとのことですが、体感としての辛味を感じることが優先されているのです。

精進料理通信教育(キャリアカレッジ)

https://www.c-c-j.com/course/food/vegetarianfood/





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三光院精進料理の英語版解説 お煮しめ編へのリンク

🇺🇸Click here for the English version.

https://englishsankouin.blogspot.com/2026/10/onishime-simmered-assorted-vegetables.html


https://sankouinsns.wixsite.com/my-site-1/blank-1/onishime-simmered-assorted-vegetables




※2 味覚としての六番目の味覚「脂肪味」が発表されていますが、そもそも三光院では脂肪分を使うこともあり得ませんし、古くからの淡味(たんみ)を六味目として意識しております。

 茶道の世界では同じ漢字で淡味(あわみ)という概念もあります。こちらはグラデーションの話。一方で淡味(たんみ)は、素材本来の味わいを指します。

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三光院

https://sankouin.com/

寺子屋三光院

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禅語三光院
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キャリアカレッジ(精進料理通信教育)

https://www.c-c-j.com/course/food/vegetarianfood/#/



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